8月9日(日)~8月17日(月)
17日月曜は定休となりますので、ご注意ください。
上記期間中のお問い合わせへの回答、部品の発送などは18日以降となります。
お客様には大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解のほど、お願い申し上げます。
それでは完成です。
まずはビフォアから。
遠目にはそれほど酷い状態には見えませんが、近付けば塗装の劣化、錆などが目立ちました。
アフターはこちら。
作業内容は以下の通りです。
全塗装 ジャバブラック → ケスウィックグリーン
全ドアパネル交換
左右フロントフェンダーサイドパネル交換
各チェッカープレートボディ色塗装
フロントバンパー交換
フロントグリル ヘッドランプパネル艶有ブラック塗装
ルーフパネル補修
各ボディパネル補修
フロアパネル・サイドシルインナーパネル腐食補修
ホイール2組塗装
リヤクロスメンバー塗装
全ガラスゴム交換
スライドガラスフェルト交換
ロールケージ撤去
リヤステップバンパー撤去
それから、紹介はしていませんが、水回りとパワステのホース・配管、ウォーターポンプ、パワステポンプ、ヒーターコアなども交換させていただきました。
こういうエンジン回りの作業も、ボディを分解したついでに行えば費用が安くできる場合がありますのでお勧めです。
お預かり期間は3月初旬から4月末までの約2ヶ月、ただし、3月はほぼ部品待ちでしたから、実際の作業は3月末から着手しています。
ディフェンダーの場合、全塗装のお預かりは特別に酷い状態でなければ1ヶ月程度、今回のようにパーツの取り寄せなどがあれば2ヶ月程度となります。事前にご来店いただいて、あらかじめ部品を手配しておくことができればパネル交換があっても1ヶ月程度で大丈夫だと思います。
ただし、フレームまで腐食があったり、バルクヘッドなど通常本国にも在庫が無いようなパーツの交換が必要になった場合は数ヶ月というお預かりになることもあります。
現在、全塗装は予約制になっており順番待ちとなっておりますが、最近の状況でキャンセルや延期、車を売却してしまったという方があったこともあり、一時期ほどではありません。現在、順調に行けば半年程度、状態の悪い車が何台かあったとしても、1年は待たずにご入庫いただけると思います。
お問い合わせはinfo@asahimotors.netまでお願いいたします。
ルーフの作業開始です。
タガネとハンマーでパテとFRPを除去します。
結構大変な作業です。
FRPは取れましたが、前の方にもかなりパテが盛ってあります。前の方はディフェンダーのルーフにしてはなんか平らだなと思っていました。
この辺りまでパテが入っていました。
どうもこの修正跡から推測するに、このルーフの大穴はサンルーフを取り付けてあったわけではなく、横転したか、立体駐車場やカーポートなどに突っ込み、ルーフを酷く歪ませ、その歪みが取り切れなかったために、歪んだ部分を切断、除去し、代わりにFRPボードを貼り付けて、段差をパテで埋めてあったようです。
本来結構波打っているディフェンダーのルーフを、ダメージによる歪みだと思ってほぼ全面パテを入れたのかもしれません。平らにするのはかなりの労力だったことでしょう。お客様が所有される前の修理のようなので、10年以上前の作業です。当時だったらルーフもそれほど高価ではなかったはずなので、交換してしまった方が良かったんじゃないかと思うのですが・・・。
さて、これをどうするか悩みました。交換の場合は部品代は110SWと変わらない100万円オーバー。とても無理です。
同じようにFRPを貼ることも考えましたが、どうしてもパテの範囲が大きくなりますし、割れたり歪んだりするリスクがあるのであまり良いことはありません。
ディフェンダーに慣れていない鈑金屋さんだと、どうしてもパネルの歪みが気になって、パテを入れて、ダメージを受ける前以上に平らな状態にしようとしてしまいます。それをやり過ぎることで、ドアならばドアハンドルの取付部等に負荷がかかってパテ割れが起きてしまったりします。しかし、ディフェンダーのパネルは歪んでいるものです。無駄なコストをかけて、修理箇所だけ違和感のある真っ平にされないように、普通の鈑金屋さんに修理に出すときはあらかじめ説明しておいた方が良いかもしれません。
ということで、今回はアルミ板を貼ってしまうことにしました。
まず、後部などの歪みを再修理して、最小限パテを入れて修理しました。
そして、サイズを指定してアルミ板を注文、それを残っていた骨材にリベットで打ち付けていきます。
最初は穴の周りだけと思っていたのですが、穴以外の部分の歪みも大きいのと、ロールケージが付いていた穴も埋められるので、ルーフのアールに沿って曲げて、雨樋まで持ってきてしまうことにしました。
サフェーサー
塗装
完成です。
どうでしょう。この違和感の無さ。アルミ板をリベットで打ち付けるなんていう修理方法は普通の車ではあり得ませんが、ディフェンダーはそもそもがそうやって作られている車です。写真のリヤコーナーのリベットは新車から付いているものです。それと比べてみても違和感がありません。予想した以上の完成度でした。
最大の難関をクリアしたので、後は細かい部分の作業になります。
全塗装時のオプション扱いの作業もありますが、車の状態や今後の使用状況来よって提案させていただいています。今までの経験から生まれた工夫です。当然、紹介しているのは一部で、色々なところに細かいポイントがあります。もちろん車検時やこの作業自体の依頼も承ります。
スライドガラスはガタついていて、カビ?苔?が生えていたフェルトを交換。
これはステーションワゴンのサイドのでも可能です。
ドアは錆びていたため、4枚全部新品交換。知らない方も多いのですが、新品ドア交換でも、ドアパネルの中身は別売りですので、ウインドウレギュレター、ガラスランチャンネル、配線等は古いドアから新品に移し替えます。これが結構大変な作業です。
防水シートはビニールハウス用ビニールで作ります。純正より丈夫ですし、透明で中も見えます。
今後できるだけ錆びないようにドア内部に防錆剤を注入。
クロスメンバーとフレームにも注入しておきました。
グリルとヘッドランプパネルはツヤ有ブラックで塗装。
組付け後は、よく雨漏りするポイントにコーキングをして、耐水テストも行います。
カーペットは組付け前に洗濯しておきました。
あとは各部を組み付けていけば完成です。
次回、完成披露です。
外装作業に入ります。
まずはパテを全て除去して下の状態を確認。
一旦サフェーサーを入れて、歪みを分かりやすくした後、鈑金をやり直し、できるだけ少ないパテで再補修します。
とは言え、左は結構な厚さになってしまいます。
クォーターパネルの鈑金完成。
ボンネットも塗装が劣化しています。普通より劣化が酷いなと思ったら、やっぱい下からパテが出てきました。ここも過去に補修されていたようです。クォーターと同じように全部剥離してやり直しました。
それから、バルクヘッドです。ベンチレーターを取り外そうと思ったら右側が外れません。どうやらコーキングで完全にふさいでしまっているようです。結構強力なもので全然取れません。結局バールで破壊するしかありませんでした。
これは部品取車から部品がもらえたので問題ありませんでしたが、問題はバルクヘッドの方。
おそらく、雨漏りを止めようとして、隙間からコーキングを流し込んだのでしょうが、そのやり方だと完全に一周綺麗にコーキングするのは難しいようで、どうしてもヒンジやストッパーが邪魔で上の方には隙間が残ります。それに対して、下の方はしっかりコーキングできます。すると、上から入った水が下に抜けずに、ベンチレーターの窪みの中に溜まります。それがこの錆の原因でしょう。
錆を落として補修です。
それから、この車は前回りも修復の跡がありました。
フェンダーもパテを落として再補修。
フロントのクロスメンバーも修復跡から錆が発生していたのでパテを除去して再補修しました。
そして各パーツの塗装。
本体の塗装
組付けです。
次回は今回の最大の難関、ルーフパネルの補修です。
作業開始です。
今回ロールケージ(フェイスガード)を撤去することになりました。この限定車のロールケージは90V8の正規輸入車に付いているものとは異なり、後部はフレームに固定されていません。90V8は内側にもフレームから立ち上がったバーがあり、ルーフパネルを挟んでそれと接続されていますが、この車はルーフに固定されているだけです。そういう意味ではロールケージというよりフェイスガードというべきものですが、これを通して車体の捩れがまともにルーフに伝わってしまい、そのせいでパテ割れが起きた可能性が高いと考えました。この時点ではルーフをどのような方法で修理するかは決まっていませんでしたが、パテを全くなしで補修するのはまず不可能だろうと思われたため、できるだけルーフに負荷をかけるのは避けるべきでした。
また、どちらにせよロールケージ自体の錆が酷く、補修するためにかなりの費用がかかってしまうという理由もありました。
ということでボディの分解を始めたのですが、いきなり躓きます。
フロントフェンダーとロールケージのブラケットが外れません。ロールケージはフロントフェンダー内部でフロントピラーにフェンダーパネルと共締めされているブラケットに接続されています。
つまり、取り外しの手順としては、ロールケージ本体を取り外した後、
1 前方の隙間からアクセスしてピラー上のフロントフェンダーとロールケージブラケットを固定しているボルトを緩める
2 フロントフェンダーを取り外す
3 ロールケージブラケットを取り外す
という順番になります。
しかし、このブラケットとボルトが錆びて一体化していて緩みません。緩みませんというか、ボルトの原型がありません。
しかし、この場所では焼き切ることもできませんし、削り落とそうにも工具も入りません。
それでも右側はたいした問題ではありませんでした。フェンダー前方が歪んでいたため、当初から交換予定だったからです。遠慮なく切り裂いてボルトにアクセスします。
問題は左側です。
こちらはフェンダーに大した問題は無かったので、現物修理で塗装するつもりでした。しばらく試行錯誤していましたが、どうにもならず、お客様と相談してこちら側もフェンダーを破壊して取り外し、新品交換させてもらうことになりました。フェンダーのロールケージを取り外した部分には大きな四角い穴が残りますので、当初はそこをアルミパネルを打ち付けて埋める予定でした。しかし、両側そうなっているならまだしも、左側は新品なので跡はなくなり、違和感があるだろうと思っていたので、結果的には良かったのかもしれません。
フェンダーを取り外した後も作業が続きます。ボディーの外装パネルを外して行くと、予想通りというか、各部に錆が出ています。
センターピラー
サイドシル
補修しました。
バルクヘッド下部、フロントフロアです。
ここは結構複雑な構造で、鉄板が入り組んでいます。腐食している部分をカット、二重構造になっているのでそれぞれのパネルを分離します。
内側のパネルを剥がしたところ。
フロントピラーの腐食部もカット
補修用のフロアパネルと、それではカバーできない分を鉄板から作りました。
できた補修パネルを溶接。
完成です。
これで本体の内部の補修は完了です。次は外装です。
正規輸入国内50台限定のディフェンダーBLACKです。
1年半近く前に予約いただいていました。全塗装は1ヶ月1台を目安に予約を入れていただいているのですが、中には状態が悪く数ヶ月の時間がかかる車もありますし、大きな事故車の修理の依頼があれば、それを後回しにする訳にはいかないので、予約はあくまでも順番待ちということでしかありません。
ちょうど、その頃から前回レポートしたレンジやもう一台のレストアレンジ、並行輸入の中古車の110のように非常に時間のかかる作業や、大きな事故修理が連続してしまいまして、遅れ遅れになり、やっと今回入庫いただけるようになりました。
状態としてはあまり良くありませんでした。積雪地域の車のため、腐食が多いのと、どうやら過去にかなり大規模な修復がされているようですが、それが適切とは言えない方法で行われているので、そこから不具合が出てしまっているようでした。
その最たるものがルーフパネルです。外から見ると思い切り分厚くパテが盛られていて、それがひび割れています。どういう事だろうかと、ルーフライニングを剥がして内側から確認してみて驚きました。ルーフが四角く大きく切り取られ、それをFRPのシート(ボード?)で塞いであります。
その段差を、外側からルーフのほぼ全体にパテを入れて隠しているのです。しかも、パテが割れ、水が浸入することでルーフライニングが湿って変形し、カビも発生してしまっています。これは非常に厄介な状態だと思いました。
本来ならルーフパネルを交換したいところです。しかし、念のため調べてみましたが、ステーションワゴンだけでなく、ダブルキャブ用のルーフも高騰してしまい、100万円オーバーです。ちょっと交換できる価格ではありません。
サンルーフの穴を埋めた方式でアルミ板を貼って埋めるか、パテを剥がしたところでそれが不可能な状態なら今と同じようにFRPで埋めるしかないかもしれません。
https://asahimotors.hatenablog.com/entry/37160122
補修跡は左右のクォーターパネルにも。
おそらく大きく凹ませたものをルーフと同様大量にパテを盛って直してあり、それが劣化してひび割れしてきてしまっています。
アルミパネルでもある程度は鈑金できるのですが、やはりあまり大きく歪んでしまうと完全には直せませんので、綺麗に見せようとすればパテを厚盛りするしかありません。しかし、パテを厚盛りすれば、このようにどうしても割れてしまう可能性が高くなります。予算や技術的なことなど、事情は色々あるかと思いますが、クォーターが一定以上凹んでしまった場合は、できる限り交換をお勧めします。ただ、今回はさすがに予算的なものもあり、できるだけ鈑金を手直しし、パテを少なくして修正することにしました。
その他、各ドアやフロアパネルなど各所に錆がありますので、その辺りを直しながらの全塗装になります。
既に全塗装の範囲を超えて若干レストアの領域に入りつつあるかもしれません。
錆については、雪国の車はフレームについては皆さん結構しっかり防錆をされているので、あまり問題が無いことが多いのですが、ドアやフロア等の普通の車ではなかなかそこまで防錆を行わないという箇所は錆が進行してしまっている車がよく見られます。その辺りにも対策する方法はありますので、予防しておきたいという方は車検などの際にご相談ください。
では、次回から作業開始です。
それでは完成写真です。
クラシックレンジには非常に珍しい背面タイヤが目を引きますが、これは実はヒッチレシーバーに取り付けてあります。
お客様が積載性を上げるためにスペアタイヤキャリアを探されていたのですが、どうしても見つからず、色々検索していた時にアメリカのサイトで見つけました。アメリカらしく、ピックアップトラックに使われることが多いようです。
残念ながら当社はアメリカから部品を取り寄せるルートがありませんので、お客様ご自身の伝手で輸入していただきました。既に何件か問い合わせをいただきましたが、当社では販売はしておりませんのでご了承ください。
それからホイールの取付部なども若干の加工をしています。そのまま取り寄せてもポン付けというわけにはいきませんので、ご注意ください。
と、いうわけで軽い補修の予定だったものが、大掛かりなレストア作業になってしまいました。この車はもちろんかなり腐食が酷い方なのですが、外装は一見きれいに見えても、今回補修しているような部分には、多かれ少なかれ錆が出ている車は多いと思います。クラシックレンジの中古車を購入される場合は、こういう部分をしっかりチェックしてください。ただ、少しでも錆が出ている車がダメだというわけではありません。そんなことを言っていたら普通に買える車はほとんど無くなってしまいますし、あったとしても大変な高額になるでしょう。価格と状態のバランスと、それ以上錆を進行させないための対策ができるかどうかが重要になってくると思います。