開腹手術と心電図

正規輸入車のV8の90のエンジン不調です。
エンジンが始動しなかったり、不意にエンストするという症状が出るとのことでした。

最初は全く症状が確認できなかったため、お客様と相談の上、まず酷かったマニホールドガスケットからのオイル漏れを修理しました。その際に取り外すのでついでということで、スロットルボデー周辺の清掃も行いました。ステッパモーターなどもエンストの原因になります。

ここまでやって様子を見ていても症状は出ないので、OKと判断して一度お返ししたのですが、再発してしまい再入庫となりました。ちなみにフォルトコードなどはなく、プラグなどの電気系は当社に入庫される前に既に交換済みとのことです。

こうなると、次は距離や年式から言っても燃料ポンプが怪しいのですが、高額になるため確証なく交換してしまうのも気が引けます。一度外してしまっているので、二度目は確実にいきたいところです。幸い?2度目のお預かりでは悪化したのか症状がそれなりに確認できたのですが、始動不良でもエンストでも、エンジンをかけ直せばすぐ再始動ができてしまいます。燃料ポンプ事態ならもっと顕著な症状が出そうだとも思われました。

症状が出た時の排気もガソリン臭くないし、プラグがかぶるようなこともないので、燃料が来ていないことは間違いなさそうです。でもポンプ自体が悪いのか、ECUなどの制御系が悪くてポンプに電気が通っていないのかはっきりしません。

セルを回してもエンジンがかからない、そこで配線をチェックしようとして、もう一度セルを回すと問題なくエンジンがかかってしまう。エンスト時も同じで、調べる前に復活してしまいます。
症状が出ている(エンジンがかからない)時に、セルを回している間に燃料ポンプに通電しているかを確認したい。ってことで、こんなことになりました。

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単純に、燃料ポンプに通電している間は点灯するようにLED電球を取り付けてみただけですけど。

エンジンがかからない時に点灯していなければ燃料ポンプは無罪、点灯していれば有罪です。

更にメリットとして、ポンプが原因ならタンクを降ろすことなくポンプを交換できます。また、今回はポンプが原因じゃなかったとしても、次回のポンプ交換は楽になります。

この処置はTd5でも可能です。Td5の場合、V8以上に燃料ポンプは弱点ですので、こうしておけば次回の交換工賃は安くて済みます。ポイントは梁を切断することになるので、強度を考えることです。蓋には少し厚めの鉄板を使い、できれば四隅だけではなく、梁にもボルト固定できるようにするといいです。

 さて、結局LEDは点灯せずポンプは無罪と判断できました。しかし、これで点灯していれば原因確定するので楽だったのですが、こうなると更に調べなければいけません。
 と言っても、次はその上流にあるリレー(マルチファンクションリレー)かECUか。ECUだったら何かしらフォルトが出そうなので、ここはまた確証は持てませんがリレーから交換してみることにしました。緑や黄色の汎用のリレーなら入れ替えてみたり、分解して接点の焼けを見たりできるのですが、残念ながらこれは専用品。値段も燃料ポンプほどではなくてもそこそこしますので当たりであってほしいところです。
 結果はどうやら正解。その後はお預かりしている間も、お返ししてからの1ヶ月以上も症状は出ていないそうです。

こんなかんじで、どうしても100%の原因診断ができないことは多々あるのですが、そういう場合は経験上の可能性、部品交換の費用、作業したことが外れていた場合でも完全に無駄にならないかどうか、なんてことを考えながら、順に可能性を潰していくことになります。

 ディフェンダーのお客様はこういうことを理解していただける方が多いので助かります。逆に何でもどんどんやってほしいと言われて、こちらが遠慮というか、確証がないからもうちょっと様子を見ましょうかと抑えてしまうほどです。