Tdi エンスト

 お客様のTdiが旅行中に信号待ちで突然のエンジン停止となりました。再度エンジンをかけようとしても、セルの回転が重いというバッテリー上がりのような症状でかかりません。そこで、近くのカー用品店でバッテリーを新品交換したら少しだけアイドリングして再び停止。妙な症状です。

 レッカーで運び込まれた整備工場で点検してもらったところ、クランクを手で回そうとしても回らないからエンジン内部の故障、焼き付きなどだという判断でした。オイル管理も悪くなく、もちろんオイルも入っている、停止前に異音もしなかったということなので、どうにも腑に落ちませんでしたが、最悪エンジンオーバーホールか中古への載せ替えも覚悟して、陸送を手配しました。

 それが今日到着。積載車から降ろされて、試しにキーを捻ってみたらクランキングの音ですぐ原因が推測できました。オルタネーター、ウォーターポンプパワステポンプ、コンプレッサー、その他テンショナ、つまりベルトが掛って回っているもののベアリングのロックです。案の定、ファンベルトを外せば即エンジン始動可能でした。そしてプーリを順番に手で回して確かめていくと、オルタネーターが回りません。オルタネーターは在庫があるので、小一時間で修理完了しました。

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 おかしいとは思っていました。Tdiでエンジンが回らないほどエンジン内部に不具合が起きるって十数年やってきて今まで一台もありませんでしたから。
運び込まれた工場ではクランクを回してみるときに、ベルトは外さなかったんですね。甘かったです。当然補機類なんか確認した上で、クランクが回らないって言ってるんだと思っていました。現地でベルトさえ外してしまえば、自走で帰ってこられないにしても、不動車ではなくなるので陸送費は半額以下になったでしょうし、部品を送って交換してもらうこともできたかもしれません。
それにしても、補機類のロックでエンジンが回らなくなるって、ディフェンダーに限らずあることですので、現地でもうちょっと真剣に点検してくれたら良かったのにと、思わないでもありませんが・・・。

 気持ちは分からないでもないんですけどね。見たことがない車が不動で入ってきたら、できれば触りたくないって思うのは当然です。どんな手間がかかるか予想できないから、作業スペースを長期間占拠されてしまうかもしれないですし、慣れていない車で時間がかかってしまったとしても、その分請求もしづらいです。できれば早く他店へ行ってくれと思うもの理解できます。弊社でもたぶんそうでしょう。ディフェンダーならその一台の修理に時間がかかって割に合わなくても、経験値が上がれば次回に生かせますから損にはなりませんが、10年に一台入庫するかどうかの車種で、飛び込みのお客様では、そこまで時間をかけて診られないというのが正直なところです。自社で購入いただいたお客様や、指名で予約を入れて来ていただいているお客様優先になるのは当然のことです。

 それに、知識があればTdiエンジンは大変頑丈で、そうそう基本部分が壊れることは無いというのが分かっているので、他の可能性から探っていこうとするのですが、そうじゃないと「変な外車=壊れやすい=エンジンがダメだ」と思ってしまうのも無理からぬことです。

 専門店が無い地域でディフェンダーを維持していこうとすると、こんな感じで嫌がったり、先入観を持たずに親身になって面倒を見てくれる整備工場さんの存在が重要になります。逆に言えば、敬遠さえされず、基本的な技術のある整備工場さんだったら、専門知識などなくても十分にメンテナンスすることが可能です。TDCiはちょっと難しいですが、Td5なら数万円で個人向けのテスターが手に入りますし、トラブルの症例はかなり出揃っていますから、そんなの無くても何とかなることも多いです。ホント、Tdiなんか昔ながらの整備工場の整備士さんが見れば、「なんだこの単純な造りの車は」って思うはずです。