ディフェンダー AT換装 (Tdi)

在庫の90のTdiをAT化した上で購入したいというご依頼がありました。
AT化は過去に何台か行っていますが、全てTd5の110で、Tdiも90も初めてでしたが、問題は無いだろう、というかコンピューターの設定などがあるTd5よりも、Tdiなら簡単だろうと思っていました。キットの価格もTdiの方が少し安いです。

しかし、実際にはなかなか大変でした。

まず、ATキットが来ないのです。3月中旬にキットを発注したのですが、当初は納期4週間と言われていたにもかかわらず、届いたのが6月中旬です。海外に在庫品以外を注文すれば、最初に言われた納期なんかほとんどあてにならないのは分かっていましたが、流石にかかり過ぎです。

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やっとキットが届いて作業を開始しても一筋縄ではいきません。最後にAT化をしたのは5年以上前だったと思いますが、その時に取り寄せたものとキット内容が結構違います。シフトや内装部分の質感が良くなっているのに対し、ATクーラーはグレードダウンです。以前は、純正のホースと純正のATクーラーの組み合わせだったのですが、今回は両方とも社外品です。ホースの方は、口金をホースバンドで留めるタイプで、ホースが劣化した場合はホース部分のみ交換できるようになっていて、社外品の方がメリットが大きい面はあると思います。しかし、問題はATクーラー本体です。

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これが、実はディスカバリーTdi用の社外品で、以前のキットに付属した限定車V8の純正物よりかなり長く、きれいに設置できる場所がありません。フレームの下には付けられるのですが、お客様はオフをやらないとはいえ、腹下の一番低い部分がATクーラーというのもどうかと思います。バンパー内部、ケースを設置してバンパー下などいろいろ検討しましたが、どうにも美しくないので、諦めてV8の純正ATクーラーを取り寄せることにしました。V8AT専用部品はかなり絶版のものが多いので、心配でしたが普通に手に入りました。ディスカバリー用に変更されたのはコストダウンが目的のようです。純正が届くまではこんな感じでテストをしていました。

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取り寄せにまた時間がかかりましたが、純正であればこのように美しく収まります。

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とは言え、コンデンサーやファンをmm単位で移動させたり、ステーを加工したり、かなり苦労はしています。

そして、ここにATクーラーを設置すれば、V8と同じように通風孔を開けてやる必要があります。
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これも、ただ穴を開けるだけだと飛び石などで破損する恐れがあるので、コアラグリル用のステンレスグリルロワを加工して取り付けました。

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内装はこんな感じで、正規90V8のものをコピーしてあるようなのでスッキリ取付できます。

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しかし、単に載せ換えたら終わりではありません。改造申請をする必要があります。以前、CSの車番組で、ディフェンダーではありませんが、アメ車を扱うショップが取材されていて、何だったか大掛かりな改造をして、「型式不明の並行輸入車は改造しても公認取る必要が無いから楽」みたいなことを言っていましたが、テレビでそんなこと言っていいのかと驚きました。実際には公認をとらなくても車検時にバレにくい、もしくは怪しまれても輸入時にどうだったのか調べるのは大変なので、通されてしまうことが多い、というだけです。
正式に申請すると、車検証の備考欄にはこのような記載が入ります。

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これで大手を振って乗られる車になったということです。

しかし、時間がかかりました。予定では2ヶ月くらいで納車だったのですが、倍以上の4ヶ月半。お客様をかなりお待たせしてしまいました。それから、見積も甘かったです。経験のあるTd5より簡単であることを前提にしていたのですが、追加部品は必要になるし、加工も必要になるしで予算オーバーでした。TdiやTd5の並行車の場合、クーラーコンデンサーが何種類もありますし、今回は大きな問題は無かったのですが、基本的に後付なので付けた人の裁量で取付位置などが異なり、場合によってはこれも大加工が必要になるかもしれません。次回はもうちょっと頂かないといけないと思いました。