ディフェンダー クラッチオーバーホール Tdi編

 昨年末から、クラッチオーバーホール作業が異常なほど連続しています。どれくらいの連続かというと、11月くらいから4基あるリフト+リフトなしのオープンスペース1台という、整備部門の作業場のどこかで常時1台クラッチ関連作業が行われているという状態です。平均して年に2~3台ペースだったのですが、どうしてしまったんでしょう?たまたま不具合が合ったり、走行距離の多い中古車を販売するから、交換しておくというのもありましたが、それ以外にもお客様からの依頼が続いています。今日も一台入りました。

ディフェンダークラッチオーバーホールをすることになる原因は普通の車とはかなり違います。さらに、TdiとTd5でも違ってきます。

普通の車は、ほぼディスクが摩耗してクラッチが滑り出して交換することになります。
しかし、ディフェンダーの場合は通常の使用方法では摩耗して交換ということが殆どありません。
なぜかかなり摩耗が少ないようで、20万km走った車でもディスクはまだまだ残量がある車ばかりです。摩耗ではなく、大抵は何らかのトラブルで交換することになります。

まず、Tdiの交換の主原因はクラッチレバー(レリーズフォーク)の突き抜けです。
クラッチは、ペダルを踏むとマスターシリンダーに油圧がかかって、スレーブシリンダーに伝わり、そのプッシュロッドがクラッチレバーを押し、クラッチレバーが「てこ」になってレリーズベアリングを押し、レリーズベアリングはクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを押す、という連動をします。
と、文章で書いてしまっても形状を知らない方には全く意味が分からないと思いますが、とにかく足でペダルを踏んだ力が、油圧や「てこ」を使って、クラッチカバーに伝わり、最終的にクラッチが切れます。Tdiで問題になるのは、この「てこ」の部分。この支点が棒を突き破ってしまうのです。「T」が「t」になると言えば分りやすいでしょうか。シーソーの支柱が棒を突き破って、動かなくなってしまう状態を想像してください。
それがこの状態です。

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こうなると、ペダルが完全には踏み込めなくなり、クラッチも切れなくなり、走行不能になります。無理矢理なら、3速発進&停止したいときはエンストさせるという荒業で移動できなくもないですが、慣れてないと危ないのでやめましょう。

 こうならないための、ヘビーデューティーレリーズフォークというものがありますが、たいそうな名前の割には、突き抜ける場所に鉄板を一枚溶接してあるだけのものです。突き抜けなくなるわけではなく、突き抜けてもある程度で止まるので、完全に走行不能にはならないっていう感じではないでしょうか。そのメリットがある分、信頼度イマイチの社外品なので製品精度とか材質の面で100%の自信を持ってお勧めできるわけでもありません。現在のところこれでトラブルになった車はありませんが、一応、お客様に選んでいただけるように、OEM品も在庫していますし、純正品を取り寄せることも可能です。

この他にも、こんな感じでダイヤフラムスプリングの一部が曲がったり

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クラッチディスクのこのスプリングが、折れていたり、外れていたりするトラブルも時々あります。

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こう書くと、ディフェンダークラッチは壊れやすいんだと思われてしまうかもしれませんが、平均的には普通のマニュアル車ならディスクの摩耗で交換になるような走行距離で発生するので、取り立てて問題視することもないとは思います。

それから、突き抜けてしまうのは、前兆なくいきなりなることもありますが、敏感な人は違和感を感じるようですし、スプリング折れはかなりはっきり滑りの症状が出ます。違和感を感じたら、走行不能になる前にご相談ください。

さて、意外と長くなってしまったので、Td5編は次回書きます。