昨今のディフェンダー中古車事情について

最近、中古車の問い合わせが非常に多いです。毎日のように問い合わせをいただいています。現在は自社のホームページにもカーセンサーにも情報掲載していないにもかかわらずです。これはカーセンサーに数台掲載していた時よりもはるかに多いですから、ディフェンダーの人気が上がってきているのを感じます。

何故情報掲載しないのかと言えば、在庫がないからです。

前にも書いたかもしれませんが、中古車の入庫はFACEBOOKで速報を出します。

https://www.facebook.com/asahimotors.net/

買取にいったら帰り道のサービスエリアや道の駅、店頭で引き渡しのものは直後に情報を出します。探されている方は、ページをフォローして、条件に合うものが掲載されたらお早めにお問い合わせください。
「こんな仕様の車が入荷したら連絡してもらえますか?」という問い合わせも多いのですが、それは行っておりません。希望される方が多すぎて、どなたから連絡するかで不公平になってしまうからです。

それから、当社は基本的には整備工場で、販売がメインではありません。よく販売メインのショップさんは、他店で購入した車の整備はしないとかいうこともあるようですが、当社は他店さんや個人売買で購入された車でも歓迎いたします。ただし、国内相場の高騰のせいか、最近目に付くようになった中古並行車(イギリス等海外で使われていて日本に持ってこられた車)はちゃんとしたところで買わないと本当に危険です。イギリスではディフェンダーは〇ポンドで売ってるのに、日本の業者は〇百万円で売ってる、どれだけボッタクっているんだというようなネットの書き込みを時々見ます。

これは認識が甘いとしか言えません。
当社はずいぶん前に中古並行から手を引きました。なぜなら、国内に新車時からある車と同等の状態に整備してから売ろうとしたら、利益が無いどころか100%赤字になるからです。この赤字になるというのも甘く考えてはいけません。整備から鈑金塗装から部品の輸入まで全て自社で行う当社で割に合わないのですから、他で合うわけがないと思っています。個人的には50万円でも要らないと思うような車が400~500万円でネットオークションで売れてしまっているのを見ると、これを買った人はどうするんだろうと心配になります。

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断言します。単純な年式と走行距離だけではなく、状態を加味すれば、日本の中古車市場はディフェンダーが世界一安いと言っていいと思います。特に10年以上経過した車に関しては間違いありません。もっとも、ここ1年程の急騰で多少怪しくはなってきましたが、輸入コストまで考えれば、海外から中古車を持って来ても割には合わないと思います。古い中古並行車は、国内市場で探すことが困難な仕様の車が欲しい場合とか、全てを覚悟の上で、自分でコツコツ仕上げていきたい場合を除いては、本当にお勧めしません。

それから、中古並行に関連して、最近何度か相談を受けましたが、年式による仕様の違いを良く把握してから購入を検討した方が良いです。エンジンはここをブラウザの翻訳機能でも使って読んでいただくと分かりやすいです。

en.wikipedia.org

国内で主に流通しているのは、ディーゼルはTd(ディーゼルターボ)、200Tdi、300Tdi、Td5、2.4TDCi、2.2TDCi、ガソリンはV8キャブ、V8EFIです。
この中で、あまり知識と覚悟、詳しいショップのサポートが無い状態で買われるなら、ディーゼルは200Tdi以降(できれば300Tdi以降)、V8はEFIにされた方が良いです。
Tdiは正規輸入でディスカバリーがありましたので、国内に部品も豊富ですし、エンジンについては日本語の整備書などもありますので、一般の整備工場さんでもその気になれば整備するのにさほど困ることは無いと思います。Td5も正規輸入がありましたので、同様です。ガソリンのEFIも同じです。TDCiはまだ新しくて、それほど壊れません。
問題なのはTdとV8キャブです。最近相談を受けたのもこの2種でした。まずV8キャブですが、アナログなだけに何があっても乗り続けられるというのは良いのですが、やはり好調を維持するのは大変です。デスビを始めとする電装周りに加えてキャブのメンテナンスも加わるわけですから、かなり大変になります。
それから、Tdエンジンですが、これに関しては国内の流通台数が少なすぎです。当社では今まで一台も入庫したことがありません。20年近く前に、一台だけボロボロの車を仕入れて、練習のつもりで内外装だけレストアして、販売するのは気が引けたので業者オークションで処分してしまったことがあるくらいです。パーツ入手はできないことは無いですが、これの専用部品が国内で在庫されていることはまずないと思います。それにTdは88(89)年までだったと思いますので、30年以上前の車ということになります。海外で30年以上乗られてきていると、どんな改造がされているか分かりません。分解前にパーツを用意して、いざ作業にかかると内部は全然違う年式の部品で組まれていたというようなことも考えられるのです。こうなってしまうと、実際の整備内容以上にコストがかかりますし、しっかり知識があって、部品形状からどのモデルのパーツが流用されているかということを判断できる人でなければ、まともに整備ができなくなります。これは当社でも自信がありません。80年代の車はほぼ未経験ですから。
更に機械部分ならまだしも、ボディにも海外感覚で適当に手が入っている車はもっと厄介です。雑に塗装や補修がされてしまっている車なら、まだ何もしていないで外見がボロボロの方がマシなのです。錆を下処理しなかったり、凹みの叩き出しもせずにパテを分厚く盛って、上から適当なマスキングで塗装されてしまっている車を手直しするというのは、普通にボロボロの車を直すより遥かに手間がかかります。

しかし、要注意なのは中古並行だけではありません。正規輸入車Td5も、もっと古いTdiも、いくら外観が良かったとしてもそろそろ本格的な整備が必要な時期です。足回りブッシュ、クラッチのオーバーホール、ハブ・スイベルのオーバーホール等、今まで一度も行われていなければ、もう行わなければいけないというメンテナンスはたくさんあります。こういう事が行われていない車であれば、購入後に次々に整備費用がかかることになります。
整備費用についてはフェイスブックに明細をアップしたことがあるので参考にしてみてください。

https://www.facebook.com/asahimotors.net/posts/4120351894647993

普通の中古車屋さんで買う場合、壊れていなければ(動いていれば)こういう作業を納車前に実施することはまずないと思います。一般の中古車屋さんレベルでの「しっかり整備してある」「状態が良い」とは、とりあえず走行に問題が無く、酷いオイル漏れがなく、エンジンオイルを交換してある程度の事だと思った方が良いです。上記の整備費用で言えば3~5万円くらいのものです。これが悪いということではありません。普通です。当社でも、もし他車種の20年落ちの輸入車の中古車を販売するならそれくらいの事しかやりません。というかできません。(もちろんそういうレベルでしか整備できないことをあらかじめ説明の上、それでも良いと言ってもらわなかったら販売しませんが)。

当社で販売した車が完璧であるというつもりは全くありません。ミスをすることもあります。そうでなくても登録前に十分な試運転ができるわけでもないですし(仮ナンバーでの試乗・試運転は違法です!)、長時間乗らないと発生しない不具合が隠れていたり、ランドローバーですから、納車前に交換した新品部品が不良品だったなんてことも時々あります。

ただ、分かっている不具合を放置したり、隠したり、明らかに本来の性能が出ていないのに気が付かずに納車してしまうというということはないはずです。

修理に持ち込まれた他店購入の車が、「よくこれで乗っていられますね」という状態であることは頻繁にあります。例えば、異音や不具合を確認するために高速で試運転をしなければならないのですが、不具合と無関係に足回りの状態が悪すぎて、その試運転すら恐ろしいのです。それが普通だと思って乗られているのは、オーナーさんにとっても車にとっても不幸なことだと思います。とはいえ、不具合があって持ち込まれているのに、別の不具合、しかもオーナーさんが気にしていることより概して高額になるようなことを指摘するのは非常に気が重いのです。
せっかく買われたディフェンダーを嫌いになってしまいはしないかと、いつも言葉を選ぶのに苦労します。しかし、できれば万全の状態で乗ってもらいたいとも思います。足回りのブッシュとショックアブソーバーを新品にして乗ってもらえば、印象が全く違ってくるはずです。ディフェンダーは、本当は真っ直ぐ走らないような車ではないんです。

あまりに長いので、次回に続くことにします。

次は最近の価格も含めて書くことにします。

昨今のディフェンダー中古車事情について(2) - asahimotors’s blog (hatenablog.com)