納車整備 ハブ、スイベル、ブレーキ編

納車整備 ハブ、スイベル、ブレーキ編

予告通り、今回から数回の連載で一台の中古車を仕上げるまでをレポートします。注意いただきたい点ですが、今回紹介する作業を全ての車に一律に行うわけでは無いということです。例えば、当社の管理ユーザー様からの下取り車で、整備履歴が完全に分かっていれば、保険的な整備は行わないことも多いです。そういう車は経費がかからないので、、その分安く販売されています。
それから、部品を交換するか、オーバーホールするかというのも、車ごとに状態を判断して行っています。当社が交換しなくていいと判断しているものを無料で交換してくれというご要望にはお答えできません。もし、当社の通常の基準以上の整備をご希望の場合は、ご予算を指定していただければ、それに応じて追加の整備を提案させていただきます。その場合はサービス価格で整備させていただきます。
 それから、この車は新品交換されているのに、自分の車は交換されていないというクレームもお受けできません。その場合は、その車はこの車よりも状態が良かったのでしょうし、別の部分ではこの車では交換する必要が無かったものが交換されているかもしれません。


さて、それでは紹介いたします。
車は2003年モデル 正規輸入車Td5 走行は105,000kmです。年式から考えるとごく平均的な走行距離で、下回りのさびなどもなく、内外装もきれいで状態の良い車です。

まずはフロントブレーキ。

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パッド残量4mmってところでしょうか。半分以下なので規定により交換します。それ以前にピストン。メッキが剥げています。パッド交換するにはこのピストンをキャリパー内に押し戻す必要があります。しかし、こんな状態のものを押し戻せば、フルード漏れや引き摺りの原因になります。キャリパーオーバーホール、ピストン交換です。更にブレーキディスク(ローター)ですが、古いパッドの形で摩耗しています。このままでも制動力には大きな影響はないのですが、鳴きが出たりブレーキの感触がおかしくなったりすることがあります。今回はディスクも交換します。

フロントブレーキで費用は約7万円です。

次にリヤブレーキ。

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ほぼフロントと同じ状態です。同じくピストン交換、パッド交換、ディスクは摩耗が酷くなかったので研磨しました。

リヤブレーキの費用は約5万円です。

作業的にはブレーキと重なる部分もあるのですが、ハブとスイベルです。
ハブは4輪全てこんな状態。

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グリスは十分ではないですが、錆びもなく、大きな問題はありません。フランジの当たり面に液体ガスケットが塗ってありますから、少なくとも一度は開けられた形跡があります。10年10万kmの車がここを一度も開けられたことが無い場合、錆だらけになっているか、逆にシールの不良でデフオイルが回ってドロドロになっています。
悪い見本です。

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4輪ともこんなことにはなっていませんが、良いと言える状態でもないので、オーバーホールしました。

スイベルもオーバーホールします。ちょっと油断している間に作業が終わってしまっていましたので、この部分の作業写真はありません。この車はやはりそれなりに整備されてきているようで、スイベルハウジングの腐食もなく、各所のベアリングにも全く問題が無かったので、交換は行いませんでした。

フロントのハブ・スイベルのオーバーホールはベアリング交換無しで約6万円です。これは最小限の金額です。スイベルハウジングやベアリング、CVジョイントなどに問題があるとそれらの部品代が入りますから、最大では15万円くらいにはなります。

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こんなことになっているのも、決して珍しいことではありません。

リヤハブのオーバーホールも行い、費用は約2万円です。リヤもベアリングには問題ないので今回は交換無しですが、交換する場合は1万円追加です。

それから、絶対にチェックしなければならないのが、リヤのドライブアクスルフランジと、シャフトのスプラインの摩耗状態です。

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この車はOK。一度は交換されているのではないかと思います。これが摩耗してかみ合わなくなると、走行不能になります。これも10年落ち以上で一度も交換されていなければ、良くない状態になっていることが多いです。

こんな状態ならアウト。

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シャフトとフランジの交換は、社外品を使えば左右で3万円程度ですが、純正品だと恐ろしい金額になります。


さて、ハブ、スイベル、ブレーキ編の費用計算です。

フロントブレーキ    7万円
リヤブレーキ      5万円
フロントハブスイベル  6万円
リヤハブ        2万円 
合計         20万円

ただし、作業が重複する部分もあるので、実際に全てを同時にやれば、1万円くらいは安くなります。

仕上がりはこんな感じです。

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 誤解しないでいただきたいのですが、この車の状態が悪いわけではありません。むしろ良い方でしょう。上記の整備を行わなくても、車検は余裕で合格します。普通の車検で入庫した車がこのような状態なら、全ておすすめ作業として見積もりには計上しますが、作業されるかどうかはお客様の判断にお任せしています。ブレーキパッドだって、あと2万kmくらいは何とかもちますから、ギリギリまで使って交換でも問題はありませんし、ディスクローターも必ずしも交換や研磨をする必要もありません。あくまでも、良い状態で乗り始めていただくための整備をするとこうなるということです。

それでは次回に続きます。