高速走行時の振動

高速走行中に突然まともに走行できないほどの大きな振動が発生してしまう110が入庫しました。
路面の段差などを越えてある程度の衝撃があったときに、振動が発生。どんどん大きくなっていき、停車寸前まで速度を落とさなければ収まりません。
時々ある症状で、ブッシュの劣化や、各部のガタが原因で起こります。ほとんどの場合、締め付けやブッシュの交換で直るのですが・・・・

点検の結果
パナールロッドブッシュ劣化 タイロッドエンド若干のガタあり ホイールバランス未調整 

実施作業
ホイールバランス調整
ピットマンアーム締め付け
パナールロッドブッシュ取替
タイロッドエンド交換
その他各所締め付け

しかし、この車は半年前に全ブッシュを交換しています。疑問に思いながらも、ブッシュの品質不良ということで上記作業を行い車をお返ししました。
ところが、50kmほど走行したところで再発してしまいました。

次にタイヤを疑い、在庫車の新品のタイヤを借りて走行してみたところ、振動は発生しませんでした。
ただ、これだけの振動がタイヤのせいだけで発生するのかが疑問でしたので、取り外したタイヤを自分の車に取り付けてテストしてみました。やはり発生しません。

そこで、さらに点検していくと、停車中にステアリングを左右に細かく切ると、フロントホーシングの横の動きが大きいことに気付きました。その横揺れが車全体の揺れになり、110がお尻を振っているように見えます。
パナールロッドブッシュをはじめ、ブッシュの劣化が原因で起こる症状ですので、既に交換しているパナールロッド以外のブッシュを順に交換してテスト走行を繰り返しました。

ラジアスアームブッシュ交換
リヤロワアームブッシュ交換
フロントハブオーバーホール
スイベルピンベアリング交換
ステアリングダンパー(自分の車のもの)交換

しかし、改善しません。
もしやと思いスイベルのベアリング、ステアリングダンパーの交換もしてみましたがダメです。

ここまでやって改善しないということは、やはりタイヤだったのかと、今度は自分の車で使用中のタイヤ(BFグッドリッチAT 2年 3万キロ使用 7部山)を付けて走行してみました。しかし発生。ただし、発生頻度はかなり下がりました。

新品タイヤ 発生せず。
2年落ち中古タイヤ 発生頻度低下。

タイヤは要因の一つではありそうです。ただ、一度発生すれば振動の大きさなどは同じなので、根本原因ではないように思われます。

 それにしても、ここまでやってダメだと次にするべきことが分かりません。ステアリングを揺らしてリンクの動きを観察しながら考え込んでいると、どうにもパナールロッドの動きが気になります。というよりも普通は動くところではありません。ダメモトで取り外してみると、なんと一番初めに交換したはずのブッシュが目で見て分かるほど傷んでいました。1週間ほどで劣化してしまったことになります。ロッドを動かしてしまうおかしな力の発生源を探していたら、何のことはない、そのロッドのブッシュ自体が傷んでいたのです。

ブッシュの品質不良の可能性もありますが、さすがに2回連続というのは可能性としては低いのではないかと思いますし、ラジアスアームなどの他のブッシュには劣化は見られませんでした。
それでも、品質不良やロッド自体の異常のことも考え、ブッシュのみ交換ではなく、部品取車からロッドごと取り外し、交換してみました。すると振動は起きません。この時点ではまだ自分の車のタイヤを履いていましたので、元に戻して仕上げとして高速道路の走行を往復で80kmほどしましたが、やはり大丈夫でした。

結果としては、パナールロッドブッシュが破損して機能しなくなっていたので、その後何をしても改善しなかったことになります。こうなると、根本的な原因が何だったのか非常に分かりづらいですが、ステアリングダンパーが一番怪しいと思っています。しかし、このステアリングダンパーは、抜けたショックアブソーバーのように取り外して点検しても分かるような劣化ではありませんでした。また、先月までのスタッドレスを履いていた間は振動は発生していなかったそうです。
 ステアリングダンパーはわずかに劣化していたものの、スタッドレスタイヤがクッションになり振動が発生することはなかったのでしょう。それが夏タイヤになったことでステアリングダンパーにかかる負担が増え、限界を超えて振動が増幅、これで発生した大振動がパナールロッドブッシュを傷めたと考えます。

この症状はかなり激しいもので、慣れていない人だとパニックを起こしかねません。始めて体験したときは分かっていてもかなり怖いものでした。特に高速走行時の発生ですので重大事故にも繋がります。
タイヤの種類は仕方がないにしても、足回りのガタ、ブッシュの劣化などは定期的な点検や増し締めでの予防をおすすめします。


まとめ

高速走行中の振動を発生させる原因
 足回りブッシュの劣化 ボルトの緩み
 ステアリングリンクのボルトの緩み、ガタ
 ハブベアリング スイベルピンベアリングのガタ
 MTなどの振動が大きいタイヤの使用 タイヤの劣化 ホイールバランスの狂い
 無理なリフトアップによるバランスの狂い

これらの原因があるとき、かつ80キロ以上の高速走行時に、轍や路面の段差などを越えて大きな衝撃を受けると、それをきっかけに振動が発生。

単純な路面の段差の影響や、これらの原因で発生する振動は通常ステアリングダンパーやパナールロッドで抑えられる。(気をつけて乗っていると、大きな段差を越えたときに数度の振動が起こり、すぐ収まるのが感じられる)

上記要因が大きすぎた場合、また、ステアリングダンパーが劣化して性能が落ちてきて限界を超えると、振動を抑えられず、増幅していき危険なレベルにまでなる。この大きな振動が発生すると、パナールロッドブッシュにかかる負担は相当なもので、振動でゴムが軟化するのか一度起こるとその後しばらくは発生しやすくなる。

それが繰り返されるとブッシュは急速に劣化し、場合によってはゴムが基部から剥がれて、全く用を成さなくなる。こうなると、それほど高速ではなくても頻繁に大振動が発生するようになる。