ブッシュ交換 社外or純正

最近依頼が増えている作業で、足回りのブッシュ交換があります。
異音が出るという末期的なところまでいかなくてもブッシュは徐々に劣化していますので、特に異常がない車でも、交換すると体感できるほどの変化があります。新車時の乗り心地を体験してみたいという方は、ちょっとお金はかかりますが、やる価値のあるメンテナンスだと思います。運転が楽しくなります。

ただ、ネットなどで安い社外品を買われて持ち込まれる方がいますが、これはお断りというわけではないですが、お勧めはしません。どうしてもということであれば承りますが、不具合が出たとしても責任は取れませんし、その対処にかかる費用はいただかなくてはいけません。

確かに、社外品は安いです。例を挙げれば、リアラジアスアームのフロントブッシュ。

イメージ 1


品番はSTC618。社外品と純正品では本国での価格が約10倍違います。もちろん、輸入経費はどちらでも同じですから、日本での販売価格は10倍もの差にはなりませんが、それでも数倍です。他のブッシュも似たようなもので、どれも5~10倍違っていて、トータルでは4~5万円くらいの差になってしまいますので、社外品を使いたくもなります。

でも、社外ブッシュは恐ろしいです。まず、一番の安物は明らかに縁の金属部分の材質が違っていました。プレスで押し込むときに、明らかに柔らかいのです。しかし、こういう部分の品質の悪さは作業時に分かるからまだ良いのです。一番の問題はゴム部分。これは見たり取り付けただけでは分かりません。不具合が出るのは取り付けて走行してから、又は交換直後は普通で数か月使った後に、ということになります。しかも、足回りは色々なロッドが関係していますから、例えば走行中に振動や異音が出るなどの不具合が出たとしても、直接どのロッドのブッシュが影響しているのか判断するのが大変難しいのです。長時間走行してブッシュに負荷がかかって熱を持ってきた時だけゴムが柔らかくなって振動が発生するなんていうこともありますので、原因を追究するにはかなりの労力が必要です。
当社は最初は社外ブッシュも使っていましたが、あまりの不良品率の高さにその倍くらいの価格のOEM品を使うようになりました。しかし、それでも不具合が出るので、現在では純正品しか使わなくなりました。
純正品しか使わなくなったといえば、実はクラッチマスターシリンダー、スレーブシリンダーなどもそうなのですが、これについては社外品の持ち込みは別にかまいません。両者の決定的な違いは、不具合の判別のしやすさにあります。マスターシリンダーなどは不良品でオイルが漏れたら、「ハズレを引いてしまった」と諦めて交換すればいいです。工賃は無駄になりますが、被害はそれだけです。

 しかし、ブッシュの場合、不具合が起きるとその診断にはかなり費用がかかってしまうことがあります。特に、ブッシュは複数個所を一度に交換することが多いですし、同じような異音や振動でも複数の原因箇所が考えられます。交換した部分のどこが悪かったのかの特定だけでも時間がかかりますし、時間をかけても断定できなければ、怪しそうなところから順に交換して試運転を繰り返すということになります。費用は単純なブッシュ交換の工賃を超えてしまうかもしれません。
プレスなどがあってご自分で交換作業ができる方はいいのですが、作業をプロに依頼しなければならない方は、安易に社外品を購入することは避けられた方が賢明です。節約したつもりが、莫大な出費になりかねません。

他にもネットで購入した社外パーツで何度か相談を受けたことがあるのが、ブレーキのピストンキットです。これも社外と純正では恐ろしく価格が違います。品質面で何が違うかというと、キットに含まれている金属の輪のようなリテーナーの硬さです。社外は張りが無くフニャフニャでした。これを無理に組もうとして変形してしまって、ピストンの動きが悪くなったりすることがあります。ではシールキットさえ純正を用意すれば、ピストンは使えるのかというと、ピストンの精度やメッキの質は見た目ではわかりませんので、それは何とも言えません。ですから、当社は高くても純正品を使います。

当社のパーツ選択に関する方針はこんな感じです。

1 安全にかかわる部分は使わない。
2 目で見て優劣が分からない部品は使わない。
3 交換に手間がかかる(工賃が高い)部分は使わない。

これを基本に、社外と純正の価格差、経験から考えられるリスク(不良品率等)、場合によってはご自宅から当社までの距離(万一の時の対応のしやすさ)、予算なども考えてどの部品を使うかを決めています。