ABSの修理

ABSの警告灯なんて気にしなければいいというのが、ランドローバーに乗る人の認識だった頃もありましたが、現在はABSの警告灯は車検の検査項目になり、点灯していると合格しません。点灯していなければいいんじゃないかということで、電球を抜いたり、配線に細工をして点灯しないようにしても同様に不合格です。しっかり規定通りの、イグニションオンで点灯しばらくして消灯という動作をする必要があります。もっともディフェンダーの場合、時速7kmを超えるまで点灯し続けるというのが正常動作ですので、時々誤解されて不合格にされそうになったという話は聞きます。

今回は、本当に異常が検知されて点灯している場合の話です。
点灯する原因は色々あるのですが、一番多いのはシャトルバルブスイッチのエラーです。オートロジック等の対応する診断機で調べるとこんな表示が出ます。

 

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Shuttle valve switch electrical failure. Failure present.
Shuttle valve switch electrical failure. Failure logged.

present の方は現在エラーがある状態、loggedは過去にエラーがあってその記録が残っている状態ということだと思います。
presentが出ている場合は、警告灯は点灯しっぱなし、loggedだけの場合は、点灯したり消えたりを繰り返していることが多いです。

このエラーが出る場合、問題は大抵このユニットの中にあります。

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ということは、修理するためにはこのユニットを交換しなくてはならないかというと、そうとは限りません。たしかに、パーツカタログにはこのユニットは一つの部品として表示されていて、交換部品は出てきません。しかし、ランドローバーからは技術情報が出ており、これを修理するための部品が供給されています。
海外のサイトを検索すると、まずABSの修理としてシャトルバルブスイッチ交換の情報が出てきます。
この部品です。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/asahimotors/t1151.html
確かにこの部品を交換して警告灯点灯が直ることもあるのですが、その割合は高くありません。体感的には5台に1台くらいです。
警告灯が点灯するユニットの内、多くはこの次の段階に故障があります。それがこの部品です。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/asahimotors/t1150.html
シャトルバルブスイッチもこの中に含まれています。
ランドローバーの技術情報には、ディフェンダー用にはこの部品しか出ておらず、スイッチのみ交換は推奨されていないようです。
スイッチを単体点検して、スイッチが壊れていることが確定できれば、スイッチ交換だけで直ることが多いのですが、スイッチもその下も両方壊れていたということもあり得ますので、スイッチだけ交換すると二度手間のリスクがあります。

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スイッチ交換もリペアキット交換もほとんど手間は変わらず、結構大変な作業です。スイッチだけで直れば、費用は安く済むのですが、ハズレだった場合は二重になる工賃が痛いという問題になります。確実性を取るか、費用取るかというところです。
スイッチ単体点検でスイッチに問題が無ければ、リペアキット交換で良いと思います。実際は8割方こちらになります。

以上は、シャトルバルブ系のエラーで警告灯が点灯した場合に限りますので、センサーの異常や配線断線、スイベルピンのガタを拾っている等のエラーの場合は対象外です。何のエラーで点灯しているかは、対応する診断機を使わなければ分かりません。

シャトルバルブ系エラーについては以上なのですが、実際にはそれ以前の大問題が隠れていることもあります。実はTd5の結構な割合の車で、上記のリペアキットの更に下部のポンプ部の不良で、ABSが作動していないのです。この場合は警告灯は点灯しません。
ディフェンダーはABSユニットの中にエアが入った場合や、普通のブレーキフルード交換も、専用診断機を使えばABSポンプを強制的に動かすことで、楽に作業を行うことができます。しかしポンプが壊れていると、これができません。ということは、警告灯点灯の修理をしても、作業中にABSユニットの中に入ってしまったエアがなかなか抜けないことになります。そもそも、警告灯が点灯しなくなっても、ABSは作動していません。
それから、通常のブレーキ関係の作業で、フルードが完全に抜けてしまうとABSユニットの中にもエアが入ってしまい、抜けなくなってしまいます。
つまり、何よりも先にABSポンプが動いているかを確認する必要があるのです。ABSポンプが動いていない場合、残念ながらその時点でユニット丸ごと交換する必要があり、大きな費用がかかります。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/asahimotors/t1541.html
OEM品でこの価格ですが、ディーラーさんで純正品交換だと、なんと60万円だそうで・・・。
先にも書きましたが、ポンプが動いていなくてもABS警告灯は点灯しません。今普通に乗られている方も、実はABSは作動していないかもしれないのです。正常作動しているかどうか、確認ご希望の方は入庫時にお申し付けください。