リンプモード

 先日からの雨漏り対策ですが、なぜここまで必死にやっていたかといいますと、雨漏りだけならまだしも、おそらく雨漏りの水が原因であろうエンジン不調が発生していたからです。

その不調とは、アクセルが全く利かなくなるのです。アクセルオンでエンジンをかければ普通に始動して吹け上がり、そのままホールドすれば高回転を維持できるのですが、アクセルをゼロにした瞬間にエンジンチェックランプが点灯して、その後は全くアクセルが反応しなくなってしまいます。
 
 この状態はリンプモードといいまして、EUCが異常を検知したときに、各部を保護するための緊急避難モードです。色々なことが原因でこの現象が起きますので、なかなか原因が特定できません。

 今回は、雨漏りの原因を特定するためにお客様が車に水をかけていたら、症状が発生しました。
その後、当社に車が持ち込まれるまでに自然回復、お預かり後の大雨で再発、翌週回復、その後の雨漏り点検時に再発、そして今まで直らないという経過です。経緯からすれば、どうやら水が関係しているのは間違いなさそうです。さらにアクセルの開度が関係してくるので、アクセルペダル=スロットルポジションセンサーがらみの不具合である可能性は高いと思われます。
 他にもこの症状を引き起こす可能性のあるとされる部分、燃料ポンプ、燃料フィルター、フューエルブロックコネクタは既に以前当社で交換済みで、アクセルペダルも以前ディーラーで交換しているようです。

 エンジンチェックが点灯するような故障なら、まず診断機なのですが、簡易のディフェンダー専用診断機では特にこれといった異常は検出されず、それならばと持ち込んだディーラーの診断機でも同じでした。

 こうなるともう地道な配線チェックしかありません。配線のどこかが傷んでいて、そこにに水が入り込んで悪戯をしているのは予想できます。とは言え、Td5の運転席を外してみていただくと分かりますが、Td5のメインハーネスは子供の手首くらいの太さの配線の束です。一番疑わしいアクセルペダル関係の配線にしても、ペダルから上に上がりメーター裏を通って、助手席前の辺りからエンジンルームへ抜け、中央に戻って下へ降りて、ミッション横、という周り道をしながら、他の配線と合流して運転席下のECUに入ります。これの全てを闇雲に探していては、日が暮れるどころか、明けて暮れてを何度繰り返すことか。

そこで、大胆かつシンプルな点検方法を採ります。

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アクセルペダルをカプラーより上で切断して、7本の配線を全てECUに直結してしまうのです。
車のあちこちを数メートル廻ってくる線を数十センチに短縮します。
確証無しにお客様の車の線を切断するのはさすがに気がひけたので、今回アクセルペダルは部品取車から取ってきました。

予想通りこれで回復しました。
ここから、1本ずつ線を元に戻していきます。
これで再び症状が出た線が当たりです。今回は赤い線でした。
当たり線が分かれば、それを引き直せばいいだけなので簡単です。
これで内装全バラシは免れそうです。ディフェンダーをバラバラにするのにも最近はかなり慣れてきましたが、決して好きでやっているわけではないのです。

さて、まとめです。

 Td5のアクセルペダルからは3つの信号が出ています。1つは、アクセルを踏むに従って電圧を上げる、もう一つは下げる、最後の一つは他の二つの許容誤差を測定しているそうです。
より正確にアクセル開度を把握して、もし1系統が壊れても暴走したりしないようになっているのだと思います。
EUCはその3つ信号を比較してアクセルがどれだけ踏まれているか把握して、エンジンの回転数を制御しています。
3つの数値が矛盾するような状況になると、リンプモードに突入するという事です。どうやら今回はこれだったようです。
 資料がなくてこの線が1・2・3のどれだったのかは分かりませんが、何らかの原因でアクセルが送った情報がそのままECUに届かず、他の2系統と矛盾したために、ECUが危険と判断して、リンプモードにしていたのです。今回苦労したのは、線の異常が完全な断線ではなかったことです。ペダルとECUの間に導通もありました。もし切れていたのなら、診断機にも何かエラーが出ていたかもしれません。
海外サイトで紹介されている事例を読むと正規の10%の電圧誤差でもこうなるそうです。
安全装置のかけすぎで、トラブルを増やしてしまったってところでしょうか。