ディフェンダー Td5のECU修理・交換

最近、Td5のECUについての相談を多くいただきます。

 

それもそのはずで、昔は10万円程度で購入できたTd5のECUが年々高額になっていき、今ではメーカーの純正定価は50万円を超えます。イギリスから直接取り寄せれば、もう少し安くなりますが、そう簡単には手が出せない金額であることは間違いありません。

 

それでも、お金さえ出せば何とかなるかというとそうでもありません。ECUを交換するには10ASユニットというセキュリティECUと同期をしてやる必要がありますし、完全な新品ECUの場合はデータの書き込みをしなければエンジンすらかかりません。これにはディーラーや専門店の持っている診断機が必要になります。
では、ディーラーに頼めばいいのかと言えば、昨今のディーラー網の再編のせいでそうもいかないようです。今までランドローバーディーラーを運営していた会社が撤退し、他の会社がディーラー権を取って新規参入した場合、Td5のような古い車に対応する診断機を導入しないことがあるようです。更に古くからのディーラーでも、診断機が壊れてしまって、使用頻度が低いから修理や買い替えをしていないということもあり、ランドローバーディーラーなのに正規輸入のディフェンダーでも整備しきれないことがあるという事態になっているそうです。

 

そういう事情から、遠方のお客様のECU修理・交換にも対応できる方法を考えました。

 

まず、ECUが壊れているかどうかの判断ですが、経験上、壊れ方は主に2種類あります。

 

(1) クランキングはしても全くエンジンがかからなくなる症状で、イグニションスイッチオンでも、エンジンチェックランプの初期点灯が無くなります。燃料ポンプも回りません。この場合は、診断機などを使っても、ECUにアクセスできませんので、フォルトコードの読出しもできません。

 

(2) エンジンがかかるものの、ものすごい黒煙を吐いたり、アイドリングも不調で、すぐにエンストしてしまいます。この場合、対応する診断機で以下のフォルトコードを読み出せることが多いです。

 

INJECTOR 1-5 PEAK CHARGE SHORT LOGGED

 

TOPSIDE SWITCH FAILED PRE INJECTION

 

BOTTOMSIDE CURRENT TRIP LOGGED

 

これらの症状が出た場合、可能であれば車両ごとロードサービスなどを利用して搬入していただければ一番なのですが、遠方でそれが不可能という場合、運転席下のECU本体と、メーター奥の10ASユニット(セキュリティECU)を取り外して送ってください。それを当社にある在庫車に仮取付することで、故障診断や交換時の再セッティングが可能になります。

 

メインECUはすぐに分かると思いますが、10ASユニットはここに隠されています。

 

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これを取り外して送ってください。診断の結果、ECU不良が確定した場合、解決法補は4つです。
2021年7月15日 更新

 

1 ECUの純正新品交換 絶版となりました。
納期はメーカー在庫によって2週間~となります。
 一番確実な修理方法です。デメリットはとんでもなく高いこと。

 

2 現品修理(1年保証) 現物修理中止しました。
 イギリスの専門業者に送って修理します。一番安い方法です。デメリットは時間がかかること(約1ヶ月)壊れ方によってはイギリスに送って点検しても修理不能と判断される場合もあります。その場合も点検料と送料がかかってしまいます。

 

3 リペア品交換(1年保証) 
ECUを交換した場合、壊れたECUは当社で回収します。それを修理したものを在庫していますので、それとの交換をします。メリットは素早く修理(最短で即日発送)できることです。デメリットはあくまでも修理した中古品であること、在庫に限りがあることです。
 
 現品修理以外は、ECU取替後に再セッティングが必要です。純正新品の場合は、プログラムの書き込みとセキュリティECUとの同期、インジェクターコードの登録です。リビルトとリペア品の交換の場合は、セキュリティECUとの同期とインジェクターコードの登録です。
インジェクターコードというのは、インジェクターに記載されている5文字のアルファベットです。これを5気筒分、ECUに書き込んでやる必要があります。ECUの壊れ方が(2)の場合は、ECUと通信ができますので、交換前に読みだしておいて、新しいECUに書き込むということができます。
しかし、(1)の壊れ方の場合、通信不能ですので、読み出しはできず目視でコードを読む必要があります。ここで問題になるのがインジェクターが完全にヘッドカバーの中にあるというTd5の不可解な構造です。コードの確認のためにわざわざヘッドカバーを開けなければならないのです。ヘッドカバーガスケットの交換も必要になり、更に費用がかかってしまいます。
 ただし、これは正式な手順ですが、色々なところの情報によると、コードを上書きしなくても問題が無いとも言われているようです。実際、コードの上書き前に試運転などした時も、何ら不具合を感じませんでした。個人的な予想で何の根拠もありませんが、おそらく、偶然1番のインジェクターに書かれているコードが、5番のコードとしてECUに登録されているというような状態にならなければ、問題が無いのではないかと考えています。ただ、コードに使われるアルファベットは10種類程なので被らないことが無いとは言えません。可能な限り正確に上書きすることをお勧めします。遠方でECU郵送での対応の場合は、コードを読んでお伝えいただければ、それを新しいECUに登録してお返しします。

 

4 デコードリペア品交換(1年保証) 

以上の事をご理解いただいた上で、もう一つの方法としてリペア品ECUのデコード版というのがあります。これはECUのセキュリティ機能をキャンセルしたもので、設定無しでどの車に接続してもエンジンをかけることができます。インジェクターコードを無視するのであれば、交換するだけで普通に走ることができてしまいます。とりあえずディーラーやショップに頼らずに走れるようになりたいというならこれをお勧めします。ただし、その元々そのECUが取り付けられていた車の仕様によっては、走行に影響しないエラーコードが出ることがあります。走行できるようになったら、後日対応診断機を持っているディーラーさんや専門ショップに持ち込んで、データを上書きすることをお勧めします。

 

 ということで、ECU故障でも安価に(と言ってもそれなりにしますが)直すことができますし、遠方でも郵送で対応する手段が確立できましたので、ディーラーさんで工賃込み60万円というような見積もりが出ても、絶望せずにご相談ください。