原因究明

車は300Tdiのクラシックレンジ。不具合は、高速走行時に振動、というよりむしろ連続的な衝撃が発生すると言うものでした。特定の速度、回転数のときにだけ、「どっどっどっどっ!」という初めて起これば怖くなるほどの振動が出るのです。これに3ヶ月近く悩みました。

結論から言えば、原因は噴射ポンプでした。Tdiの噴射ポンプ純正新品はイギリスから取寄せても50万円くらいします。信頼度イマイチの社外品でも10万円くらいにはなるでしょう。しかも、噴射ポンプが原因であるという確証はありませんでした。試しに交換してみるには高すぎる部品です。
そこで、部品取のディフェンダーから噴射ポンプを取り外し、クラシックレンジに移植してみました。クラシックレンジはATなので、キックダウンケーブルを繋げるステーは適当に作ってみました。何とかなるものです。

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試運転すると、完璧に症状が治まりました。
これで、原因は噴射ポンプである事が確定です。多少高くても心置きなく部品を取寄せられます。

と、まあ、簡単に書きましたが、ここまで来るのに3ヶ月。総試運転距離は500kmくらいでしょうか。
ひとつ作業をする度に浜松まで試運転に行っていました。なんせ発生条件が、「速度が時速80km前後、エンジンの回転数は2200~2400、シフトは4速で、しかも3速から4速に切り替わり、回転数が2200回転に落ちた直後」というシビアなものなのです。合法的にこの条件で走行できるところ(無料)は、近くには遅い時間の浜名バイパス(80km制限)しかありません。その上、振動が発生している状態からアクセルを緩めても踏み込んでも、振動は消えます。加速も減速もせず、2200~2400回転をキープした場合のみ発生し続けるのです。この条件に気付き、意図的に振動を発生させることができるようになるまで、200kmくらい走りました。

作業内容としては

アイドリング低い 調整 

ATF油量不足 汚れあり、ATF交換 ATフィルター交換 

フューエルセンダーユニット フューエルフィルタ フューエルリフトポンプ 脱着 点検 

ターボの羽が曲がっていることに気付き、ターボ(中古)交換。加速改善、振動変化なし。

インタークーラーホース、劣化あり、交換 振動変化なし。

プロペラシャフトラバーカップリング亀裂多数、交換 変化なし。

フロントプロペラシャフトはずし、2WDで走行 変化なし。

触媒ありのダウンパイプを他車の触媒無しのダウンパイプに変更(触媒の詰りを疑った)。 変化なし。

リヤの各ブッシュ交換 乗り心地改善。振動は僅かに収まったが、足回りがしっかりしたので揺れづらくなっただけ。

 エンジンを疑ったり、足回りや駆動系を疑ったり、一貫性が無いと思われるでしょうが、それほどどこが発生源とも判断しかねるような振動だったのです。フロアを叩いているようにも感じるし、トルクが断続的に抜けているようにも感じる、変速ショックが連続していると言われればそう思えるし、プロペラシャフトのバランスが狂ってもこんな感じだろうとも思えるような感じでした。
しかも、このレンジは当社で販売した車ではなく、徹底的なリフレッシュがされているわけではないので、致命的ではなくても、原因となってもおかしくないような消耗度の部分があちらこちらに見えてしまいます。そこでコストが安く、例え原因ではなくても交換してそれ自体無駄にならない部分から可能性を潰していきました。

しかし、それも結局やりつくしてしまい、もうエンジンかミッションしかないという結論になりました。そして海外の掲示板に、全く同じ症状がマニュアル車ディフェンダーに発生しているレポートが数件あり(原因不明のまま)、エンジンがより疑わしいと思いました。そのエンジンの中でも、僅かなアイドリングの不安定さから噴射ポンプを疑い、最終的にそれが正解だったわけです。

ただし、どういうメカニズムであんな症状が出たのかが分かりません。燃料噴射が追いつかなくなった?でも、それなら更に加速したときに症状が消えてしまうのが理解できません。これについては交換した噴射ポンプを分解して調べてみようと思います。何か分かればまたここで紹介します。

それにしても、今回は原因がなかなか分からず苦労しました。結果的に無駄ではないとは言え、原因とは直接関係の無い作業をたくさん行ってしまいました。本当なら原因を完全に特定してから作業するのが理想ですが、特定条件下でしか発生しない振動、異音、電気系のトラブルなどの場合は、ある程度見込みで作業をしていかないとどうしようもない場合があります。この点はご理解いただければと思います。