全塗装について

全塗装のお問い合わせが非常に増えています。
そろそろTd5の年式の車の塗装が劣化してきているのと、価格が上がってきているので、せっかくだからきれいにしてもう20年乗ろうというような方が多いのかもしれません。

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現在塗装予約は約2年待ち、それも伸びる可能性も大きいです。大体1台1~1.5ヶ月の計算でこれですが、状態が悪かったりすれば2~3ヶ月かかる車もあるかもしれません。予約は電話やメールだけで、実物を確認していない車も多いです。「そんなに状態が悪くないですよ」と聞いていた車が実は・・・ということもあります。


それに、年に1~2台は入ってくるそれなりの規模の事故車の修理もあります。ドアとかクォーターパネル交換くらいのものであればそれほど時間はかからないので関係は無いのですが、横転車やフレーム修正を伴うようなものは全塗装と変わらないくらいの時間がかかりますし、作業スペースも占拠します。

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これを、「予約待ちで2年後にまた入庫してください」というわけにはいきませんので、優先して作業するしかありません。こういうのがあると、その分全塗装予約の方のお待ちいただく期間が長くなってしまいます。

それから、よく他車種の全塗装の相談をいただくことがあるのですが、基本的には全塗装はディフェンダーとクラシックレンジ、まだやったことは無いですがディスコ1だけとさせていただきます。

あれだけバラせるのだから、他の車もできるだろうと思ってお問い合わせしてこられるようですが、そう簡単ではありません。

一般の鈑金屋さん、修理工場にディフェンダーの全塗装を相談すると、断られることも多いと思います。多分、仕上がりに厳しいところほど断るのではないかと思います。
これは分解の作業工程が読めないからです。仕上がりを良くするためには、内装も外装もできるだけ分解してから塗装する必要があります。しかし、やったことが無ければ、分解するのにどれだけの手間がかかるのかはっきり言って分かりません。さらに、10年以上経過した車の部品を取り外すと、樹脂でできているものなど何が壊れるか分かりません。壊す以前に、一度取り外してしまうと再使用不可の部品もかなりあります。
大雑把な見積もりを出して引き受けてしまうと、大変な赤字を食らうリスクがあるのです。
金額の事は置いておくとしても、クリップ一個が壊れてしまったり、後から必要な部品が発覚したために、取り寄せるのに数日、国内に無ければ1ヶ月以上(正規ディーラー経由の場合)も作業がストップしてしまうなんていう事も珍しくありません。ディフェンダーの事を知らなければ、そういった部品が絶版で手に入らないというのも怖いと思います。
だからそうやってしっかり分解して仕上ないといけないと考えている鈑金屋さん程、気軽には引き受けません。逆に、気軽に引き受けてくれるところは、あまり分解せずにマスキングして塗装してしまうつもりかもしれません。全塗装のやり方はそのお店によって全く違いますので、依頼されるときは工程や内容をしっかり打合せして行うことをお勧めします。

誤解しないでいただきたいのですが、マスキングして塗装することがいけないと言っているわけではありません。費用対効果の問題で、パッと見でキレイであれば良く、不具合が出たらそこだけ後日やり直せばいいということであれば、それで十分です。
マスキングについては以前書きました。
https://asahimotors.hatenablog.com/entry/36576925
https://asahimotors.hatenablog.com/entry/36601500
ちなみに、9年前の記事なので、現在の推奨分解レベルはこの当時よりかなり上がってしまっています。経験を積み重ねることで、どうやればより美しく、耐久性がよく仕上げられるかというのが分かりますので、作業内容は日々進化しています。
そして、部品についても、何が壊れても作業がストップしないように、あらゆるクリップ類や細かい部品を在庫するようになっています。

そういうわけで、ディフェンダーの分解ができるからと言って他車種の分解ができるわけでもありません。それでもやろうとすると、無駄に時間がかかってしまいます。ということは無駄に費用がかかるということです。マスキングで塗装すればいいという方もいらっしゃるかもしれませんが、それならばそういう作業に慣れた業者さんに依頼した方がキレイになりますし、金額も安いのではないかと思います。