最近の仕事 1 後編

順調に進んでいた作業ですが、思わぬトラブルが発生してしまいました。 

 作業開始から約3週間。塗装も終わり、屋根を乗せるだけの状態になっているにもかかわらず、納期2週間の予定だった屋根が来ません。多少部品が遅れるのは想定の範囲内ですが、さすがに心配になって問い合わせをすると、そこからさらに数日後に欠品の連絡が・・・

「今更?じゃあ、サンルーフ無しのパネルは?」
「在庫無し、入荷未定です」 

いやいや、洒落になりません。この事態が怖かったから高いのを承知で国内手配だったのに。しかも注文直後ならまだしも、約束の納期を大幅に過ぎた後に欠品って・・・。

 いくら部品屋さんに怒っても、無いものは無いので何とかしなければなりません。
こうなればイギリスからの手配です。ただ、ディーラーの返事は「本国欠品」でした。本当だとするとイギリスにもありません。祈るような思いであちらの部品屋さんに問い合わせるとやはり「無し」。さあ、困りました。対処法を考えると

1 曲がった屋根を戻して一旦お返しする。
   果たして付くのかどうか?

2 屋根が来るまでひたすらお預かり
    いつ来るのか全く見当も付かない。 

3 在庫の中古車の屋根を取り外して使う。新品の屋根が来たら中古車に。
    かなりの手間。お客様には中古で我慢してもらうことに。

 どれもいいことではありません。お客様は3でもいいといっていただきました。しかし、後で触れますが、単純に新しいという以外にも新品の屋根は良い点があるのです。できればやはり新品を使いたい。

 悩んでいるとイギリスの部品屋さんから連絡がありました。「NEW TAKE OFF ROOFがある。ただし、難点は穴が開いてないことだ」英語がイマイチな私は、最初、新品のパーツが見つかったということだと思っていましたが、どうやら、ハードトップとして一旦作られた車を、客の注文に応じてオープンに改造したときに余るルーフパネルがあるということだったようです。基本的に同じ部品なのですが、ハードトップ用なので、サンルーフはもちろん、アルパインウインドウの穴もありません。相当面倒な作業が予想されますが、背に腹は代えられません。即、注文を入れました。
 価格自体は高くありません。ディーラー定価の数分の一です。しかし、送料はとんでもなく高額ですし、部品が部品ですので梱包代もかかります。トータルすればディーラー価格と殆ど変わらなくなってしまいました。部品屋さんは商品代の数倍の送料が納得いかないらしく、しきりに船便を薦めてくれましたが、そんな時間はありません。それに今回は保険会社に定価までは請求できますので、大丈夫です。気遣いに感謝しつつも急ぐようにお願いしました。

 それから約2週間、トラックの荷台ギリギリいっぱいの巨大な木箱が届きました。

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 ルーフパネルは一人でも持ち上がる重さですが、箱ごとだと6人がかりでやっとです。最大限に厳重な梱包です。さすがに高い梱包代を取るだけのことはありました。

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しかし大変なのはここからです。穴が大きければ雨漏りの元、小さければサンルーフやアルパインウインドウが入りません。失敗すれば取り返しが付きませんので慎重な作業が要求されます。小さめに開けたあと、少しずつ削って整えます。

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そして塗装。

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その後、組付けです。せっかくと全塗装したボディを傷つけないように慎重に。

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完了です。

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後は内装の戻しですが、せっかくバラしたのでついでに色々やってみます。

断熱&防音

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シンサレートとレアルシルトという素材を使いました。どちらもデッドニングでは有名な高性能素材です。これで夏場は涼しく、冬場は暖かくなりますし、雨が降っているときに車内で寝ていてもうるさくないはずです。

ルームランプの増設

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ディフェンダーのルームランプは前後にしか付いていないので、中央部に一つ増やしました。

これで何とか完成です。お客様を大変お待たせしてしまいました。

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さて、このルーフ、作業前の写真と比べると違いがあります。縦溝のプレスラインが入っています。
古い年式の車でも今部品を注文すればこれになります。プレスラインが入っていれば強度は増しますし、旧型のように分割していないので雨漏りの発生するポイントも少ないことになります。雨漏りしづらいことが貢献しているのか、トリムや接着剤などの材質に改善があったのかは分かりませんが、このルーフパネルが採用された以降のディフェンダーでルーフトリムが垂れ下がっている車を見たことがありません。