エアコン&クーラー

 旧型(Tdi、Td5、V8)のディフェンダーは冷房がエアコンではなくクーラーが基本となっています。
エアコンとクーラーはどこが違うかということですが、エアコンは冷やすことと温めることを一つのシステムで行っています。冷温一体ですから、当然全ての吹き出し口から暖かい風も冷たい風も出てきます。また、除湿した温風ということも可能です。

TDCiはこんな感じです。

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個人的にはセンター吹き出し口を閉じるか向きを変えられるようにしてほしかったと思います。

 これに対して多くの旧型に付いているクーラーは冷やすことしかできません。もちろん、ディフェンダーにはヒーターは標準で別に付いていますが、吹き出し口はフロントガラスのところと、運転席と助手席の足元だけです。正面に風を出すことができませんので、後部座席には全く温風が届かず、これがディフェンダーが寒いと言われる一因になっています。

 そして、冷やす方でも冷風は膝元の吹き出しからしか出ません。ディフェンダーはクーラーが効かないと思われている方がいますが、実はそんなことはありません。機能が正常であれば、この吹き出し口からの風の当たる部分は寒いほど冷えます。しかし、吹き出し口が下部にあるだけに、後席まで冷風がなかなか届きません。前の席の方に合わせると、後ろの方は暑く、後ろの方が涼しいようにしようとすると、前の方は寒いのを我慢、なんてことにもなります。これを解決するために、扇風機を設置して冷気を循環させたり、セカンドシート後ろにカーテンを設置して荷台の方に冷気が逃げ無いようにしたり、前吹き出し口からダクトを回してセカンドシートまで風を送るなど、皆さんいろいろ工夫されています。

Tdi Td5はこんな感じです。

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クーラーのメーカーや仕様によっては足元への温風の吹き出し口が無いものもあります。

こんなわけで、クーラータイプの旧型と、エアコンタイプの新型を比較すると、快適さではやはり新型に分があります。

 しかし、90年代のディフェンダーにも、高級オプションとして、純正エアコンがありました。クーラーではなくエアコンです。このタイプであれば、同じ吹き出し口から温風も冷風も出て、吹き出し位置の切り替えも、外気、内気の切り替えもできます。

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エアコンであれば外気導入のためのベンチレーターは不要ですし、エアコンユニット設置のためのスペースも必要になるので、エアコン装備車はこういった形でベンチレーターの部分には樹脂の蓋が付きます。ということは、雨漏りポイントが減ります。

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 こう書くと、純正エアコンが素晴らしいような気がしますが、実はそうでもありません。やはり高機能であるということはそれだけ複雑ということで、複雑なものが20年も経過すれば、いろいろと問題も出てきます。各所の切り替えがうまく作動しなくなり、冷風と温風が同時に出るような状態になってしまったり、外気導入のシャッターが閉じなくなって走行風が入ってきたり、色々とトラブルが出ます。部品も供給が終了してしまったものも多く、修理はいつも苦労します。部品が手に入らないのは、同じく大半の90年代の車に付いている社外クーラーも同じことですが、こちらは構造がシンプルなだけに、汎用品の流用が容易なので、それほど部品で苦労することもありません。

さて、今回のお車も、そんな感じで不具合が頻発したのが原因だと思いますが、思い切って純正エアコンを撤去し、2000年あたりから販売されている純正クーラーにごっそり入れ替えてしまおうということになりました。しかし、エアコンを取るということは暖房機能もなくなるということです。実は、同じ作業を過去にも行ったことがあるのですが、その際には部品取車から全てのヒーター部品を移植することで、安価に済ませることができました。しかし今回は左ハンドル。残念ながら左ハンドルの部品取車はありません。そこで思い切って純正ヒーターは諦め、その代りにFFヒーターを取り付けることにしました。純正ヒーターを新品で取り付けるのと比べて、費用的にはむしろ安いくらいで、暖かさは比べ物になりません。


それでは作業を紹介していきます。こちらが作業前のエンジンルームです。

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左ハンドルということもありますが、左側に見慣れない箱があって違和感があります。これがエアコンのユニットです。

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まず、これを撤去してしまいます。ついでに元から付いていたエアコン配管、コンデンサー、コンプレッサーなども取り外します。

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次に室内の作業です。着手前はこんな感じです。

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ダッシュボードの下に蓋をして、そこにシステムを埋め込んである感じです。フリースペースが無いので、オーディオ等を付けるとどうしてもゴチャゴチャしてしまいます。一度全てを取り外してしまいます。

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整理しながら室内ユニットを取り付けます。

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そして、またエンジンルームに戻って新品のコンプレッサー、コンデンサー、配管を取り付けます。

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作業は更に進みます。オーディオやFFヒーター、フォグのスイッチ、オンダッシュナビ、その他の電装品をスッキリさせるために、2DINキットをインストールします。スイッチなどの位置を微調整て仮付けします。

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ETCは、吹き出し口の撤去跡にビルトイン。

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最終的にはこんな感じになりました。

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次はヒーターの設置です。
このお車は、南米で新車購入され、そのまま日本に持ち帰ってこられたということで、そのせいか珍しい仕様で、助手席下に補助燃料タンクが付いています。これが付いた車を見るのはこれで2台目ですので、かなり珍しいと思います。しかし、使われていないということなのでこれを撤去し、ここにヒーターユニットを設置します。

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吹き出し口は運転席、助手席、セカンドシート左右に設置しました。

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これで快適になるはずです。

今回は、この他にも車検、オイル漏れの修理、クラッチのオーバーホール、色褪せたフェンダーの塗装、なども行いました。もうすぐ20年となる車ですが、これでまた20年は乗っていただくことができるはずです。
かなり時間がかかってしまいましたが、一応新品クーラーの効きを体感いただける季節に終わらせることができてほっとしています。